雲の川 利根川
藤原ダム放流中につき初心者お断り の巻
群馬県月夜野町ではホタルが見ごろだという。ときに見ごろの時間は夜だという。それも20時以降だ。ではそれまでなにをすればいいか? なにをしているべきか?
その質問はすでにFAQに登録されているような気もするが、当然のごとく川を下るのである。チョイと調べると月夜野町というトコロは、諏訪峡の出口から下り始めてここで上がるとちょうどよい中級者向けコースになるようである。
しかし1年ぶりに訪れた利根川は、やはりというかなんというか、相変わらず剛の川なのであった。
以上前説
日本の川101という本をじっくり読んでみると、月夜野町辺りの利根川は普段は全く水量が無く川下りに適さない区間、とあったが先週この辺を通りかかった際、川は真っ白で川岸に設置してある電光掲示板には
藤原ダム 放流中 というメッセージが表示されていた。そういえば利根川を下るコマーシャルラフト会社のHPにもベストシーズンは4〜6月とあり、下るなら今の時期かムム〜とじっくり検討していたら、今週も再び月夜野町に来る機会に恵まれてしまっていたのである。というか、ホントはホタルを見に来ただけなんですけどもね。
今回の川下りにおいてはあくっちゃんはお休みである。あぁ、心の友よあくっちゃんよ! キミはなぜにお休みなのであるか! キコリひとりだけで川を下れと言うのか! おぉあくっちゃんよあくっちゃんよ、というかあくっちゃんは所用があるのであって、たまにはひとりのんびり川を下るというのもよいであろう。
実を言うと今回はリョウ団員を引き連れてチョイと下ってみようかと思っていたのであるが、彼女の実力は初心者級であるし、下る区間の下見はしていないし、それになにより
川がおどろくほど冷たい!! のであって、もし沈脱したりするとあっと言う間に低体温症になってしまう危険が十二分に考えられたし、それに前回の尾瀬を散策した際にとどまらず、いつも苦労ばかりかけるので、どうしようかなぁと考えていたのである。彼女の方はというと、
一回沈するまで下ろうかな
やる気満々のリョウ団員。彼女はこの川の怖さを知らない。まだ。と気合いがあるんだかないんだかイマイチ分からないやる気をみせていたが、実際、川にはいって手をつけてみたときのリョウ団員の情けない顔と、結構流れが速く沈脱すると大変なことになりそうな悪い予感が脳裏を駆け巡ったので、まぁ今回はやめときなしゃれとそーゆー事にしたのであった。
川岸を降りようとしたらコケてズベベとおっこちたリョウ団員。先が心配である。
というか、今回は涙をのんで陸に上がってもらったのだった。そんなわけで今回の出発地点は月夜野町の矢瀬親水公園下である。常連さん達はここが上陸地点にしているようだけども、まぁ、今回は下見的意味合いが強いのでここからである。一人旅だ、ムリは出来ない。それにここからくだっても相当満足できそうである。なにより、
いきなり手ごわそうな3級の瀬があるのである
いきなり現れた手ごわそうな瀬。これは3級はあるね! ゼッタイ!!
そんなわけで姿勢を正してしゅっぱ〜つ!
利根川様に対して敬意を持って姿勢を正してエントリー 今まさに利根川につっこもうとするキコリ。ちょっと逃げ腰である。 ここの瀬は本流を通ればそんなに難しいわけではないが、写真撮影のため右岸側から入るとそこには大きな石がゴロンゴロンと居なさり、必死のパドリングにも関わらずドンドン大石の方に吸い寄せられる。うっひょ〜!
ソリャア〜! いったれ〜〜ぃ!! 大きな白波で前が見えなくなったりもするが、ドッタンバッタンと瀬を通過。それにしてもなんと勢いのある波であろうか? それに重い。重いと言うか硬いという感じだ。ウェーブのボトムに突き落とさる毎に地面に落とされたときのような、そういう固い感触があるのであった。水が冷たいせいかな? とかそんなことを思っている間に次の瀬がやってきた。
この瀬からはなんだかイヤな音がするなぁと思っていたのだが、案の定
テトラとが散在するいやぁ〜な瀬! であった。
イヤな音がするなぁ〜と思っていたら、テトラによって白波を立てる瀬なのであった。追突注意!!波の形を見るに本流の中にもテトラがありそうである。チキンテールというんだったっけ? そんな波がチラホラ。うーむ、どこを通るべきか・・・等とじっくり考えていられない。利根川の強まった流れはカヤックをどんどん下流に押し流す。そのスピードはまるで駆け足のようである。あっと言う間に瀬に突入してしまった。
ドッコーーーン!!
あいってぇ〜〜!!なーんも考えずに瀬に突入すると、隠れ岩状になっていたテトラに激突! 艇は突き上げられお尻に鈍痛が! イテーーッ!! スピードがあったおかげで張りついたり乗り上げたりはしなかったが(ま、当然かぁ)艇に乗っていながら結構な痛みをお尻に覚えつつクリアー。まったく利根川ってヤツは、と思いつつ
こんなトコ、初心者さんが来るところじゃねぇなっ と思うのであった。リョウ団員をおいてきて正解であった。もしこんなところを下ったとすると沈は免れないであろう。いや、沈するだけならいいがテトラに引っかかったりした日にゃぁ、アンタ! という感じである。
とりあえずこの瀬を過ぎると両側きちんと護岸されたテトラいっぱいの区間をちょいと漕ぎ下って橋の下へとたどりついた。相変わらず電光掲示板には「藤原ダム 放流中」と表示されている。うーむ確かにそんな感じの川の流れだな。水は冷たく重く固い。剛流という感じである。
さてそんな電光掲示板とともに現れたのは、またまた瀬である。川はちょっと狭められ白波がたっている。それも三角波の様な強まった波が立っている。音もすごいぞ!
ゾゴゴゴゴーーーー うーむ、なんて強まった音を出しやがるんだこの瀬は。オイラを飲み込もうってのか! オイオイオイ! そうはさせね〜ゼェ〜!! と時代劇風に言ってみてもこの瀬はこうべを垂れてひれ伏すでもなく、相変わらず強まった音を発生せしめているのであった。
鉄橋下の強まった瀬。波頭は高く、前が見えない。それに剛の流れである。いや〜んとりあえずこの瀬を過ぎると川幅は急に広まり、そしてなぜだか知らんが川を覆い隠すように霧が発生しているのであった。水温が低く気温が高いからだろうが、それにしてもすごい霧である。霧と言うか川の流れに沿って発生しているこの状況は、どちらかというと
雲の川と言った方がその姿を端的にあらわしている 様な気さえする。
雲の川と言った方が正しかろうと思われる利根川の流れ次の橋を越えると川は分流するようになり、水深も浅くなり、推進力も弱まってルート選択が難しくなった。とはいえポリ艇なのでポーテージするほどのことではないのだが。と、そんな感じでそうこうしていると、次第に霧は深くなっていったがそんな中からボンヤリと巨大建造物が見えてきた。
国道17号線の巨大な橋! うっへぇ〜、すっげぇでっかい橋だなぁ〜とその橋脚部分の脇をおそるおそる通過するとさらに霧は深くなってきた。しかし
瀬の音だけはブキミの大きく聞こえてくる 一寸先は霧、二寸先もやっぱり霧というこの状況の中で、一体なにが待ち受けているというのか。遠くの風景はちゃんと見えているのに川の様子だけは見えないというのはかなり異様な雰囲気である。ムムゥ。
あわわっ! あやっ! おぉっ! 突然の落ち込みにびびるキコリ。なぜだか知らんがスターンが喰われてあわや転覆の危機! を冷静なるローブレイスで乗り切り、あとは流れに身を任せ、どんぶらこっこ どんぶらこっこと流されていくのであった。いつの間にか目の前には水門が出現し、そして木が生えているほどの中州が出現し来たのであった。
見えている木々は岸ではなく、中州である。利根川の大きさを感じる一風景である。遠くの風景が水墨画のようである。フムまぁ、そんなわけでしばし流れのゆるやかになった利根川を下っていくと、霧の中からリョウ団員が現れ、アンタ紅天女のつもりかエェーコラ、というツッコミを考えつつも、おぉーここが約束のゴール地点なる運動公園であるか、フムフムッと言う感じでゴールしたのであった。今回の下リング時間は1時間20分であった。なんとも短い川下りのような気もするけども、霧に隠された利根川はなんとなれば秘境の川を下る、ってな印象もあるわけで下っている途中は時間の感覚がすっかりマヒしていたので長いとも短いとも、そういった感覚はないのであった。あるのは熱気でムンムンした体と、低い水温ですっかり動きの硬くなった指・腕だけである。
ここまで川がつながっているわけではないが、利根川下りの余韻が体の芯に残っていたキコリは、ついつい公園の中でもカヌーに乗って落ち着いてしまうのであった。
公園内の水たまりに入ってカヌーを浮かべてしまうキコリ。ある意味、おバカである。体力的にはまだまだいけるという感じではあったが、実のところ、低い水温の利根川は沈などしていないのにも関わらず予想以上にキコリの体力を削っており、お昼ご飯にと立ち寄った沼田市の青空という焼肉屋では、大盛りご飯・並ご飯・カルビ・ハラミ・並ミノ・並タン・カルビスープ・レバサシ・石焼ビビンバ・チゲスープ・汲み出し豆腐、と相も変わらず暴食に精を出してしまったのであった。
相も変わらず暴食中のキコリ。料理がテーブルに乗り切らないのは定めというものなのであろうか!?来年はもっと上流から下ってみたい利根川。そうすると晩メシは5千円を大幅に上回ることは想像に難しくない、とチラリと思うキコリなのであった。
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